◆ 胃バリウム検査で癌になる? ◆


内視鏡は痛い苦しいのでなるべく受けたくないというイメージが定着しています。しかし、そのような理由で内視鏡を避けてバリウム診断を受けるなら以下の文章を読んで良く考えてください。



 最近の読売新聞(16年3月15日)で英国オックスフォード大グループの調査で日本人は75歳までにがんになる人のうち、放射線診断が誘発したがんの割合を算定した結果、3.2%という15カ国で世界一のデータが得られました。がん全体の3.2%がレントゲン被爆で誘発されたという医療先進国として恥ずかしい数字を減らすためには、過剰なレントゲン検査を可能な限り減らさなければいけないことになります。新聞では過剰なCT検査が問題だと取り上げています。CTの被爆線量は10―20mSyです。
●ところが胃バリウム検査が意外に被爆線量があることをご存知ですか。直接撮影(大きなフィルムで撮影する方法)では15―25mSy。間接撮影(健診車による小さなフィルムで撮影する方法)では20―30mSyになります。胸部X線写真の被爆量が0.1mSy(読売新聞の0.02mSyが間違い)ですから胃バリウム検査では何と胸部X線写真の150―300倍の被爆があることになります。
●健康な人でCT検査を毎年受ける人は少ないと思います。むしろ胃バリウム検査を毎年受ける人の方が圧倒的に多いと思います。レントゲン線は遺伝子の本体であるDNAを傷つける作用があります。傷ついたDNAが原因で発癌するには1回の被爆量が50―200mSy(広島長崎のデータ)と言われていますので、1回の胃バリウム検査で発癌することはありませんが、毎年胃バリウム検査を受けるとDNAが徐々に傷ついて発癌に至る可能性は否定できません。
●胃バリウム検査が発癌する原因のひとつに挙げられることを知らなければいけません。健康維持のために胃バリウム健診を受けて発癌するとは何たるブラックジョークでしょう。それだけでなく飲んだバリウムが固まって排泄できなくて苦しむのは大変です。
●胃バリウム検査は診断能でも限界があります。解剖学的に胃は三次元の袋状の形状をしています。それを二次元のフィルム上で表現するため前後壁のバリウムの重なりで病変の見落としが出て来ます。また食道はバリウムが垂直に落下するため撮影のタイミングが困難で微小病変は見逃しやすいのです。食道の微細病変を見つけるためには角度を変えて何枚も撮影する必要があります。半年前の人間ドックで胃バリウム検査を受けて正常と診断された方が当クリニックの内視鏡検査で食道癌と診断されました。
●撮影は通常レントゲン技師が担当して読影は医師が担当します。ダブルチェックのようですが、撮影も読影も医師が担当するのが理想です。透視した者だけが病変を見つけることが出来てそれをタイミングを見計らってレントゲン写真としてフィルム上に撮影するのです。実際は技師が撮影して読影を医師が担当するので見落としの可能性があります。
●レントゲン検査は内視鏡より苦しくないと思われていますが、無痛内視鏡なら全く痛くも痒くもありません。痛みや苦痛で無痛内視鏡と胃バリウム検査を比較するのはナンセンスです。無痛内視鏡を受けた人はむしろバリウムを飲まないので後でバリウムが固まらないので楽だとか、眠っている間に終わるのでいつ受けたのか全く記憶がないという声が多数寄せられています。今までは毎回バリウムを飲んでいたが次回から必ず内視鏡にするとほとんどの受診者が言います。
●内視鏡のメリットを上げたら次のようになります。直接胃の粘膜を観察して色素染色等で精密診断するので平坦型の微細病変を発見できる。胃がんには隆起型、潰瘍型、平坦型があります。潰瘍型と隆起型はバリウムでも診断可能ですが平坦型は不可能です。内視鏡では染色して胃粘膜の色調の変化を捉えてその部位から細胞を採取して病理診断します。平坦型では病理診断を見て胃がんと診断出来ることがほとんどです。慢性胃炎が進行して胃がんになる典型的な例が平坦型です。平坦型早期胃がんはほぼ全例が内視鏡的粘膜切除の対象です。早期胃がんのうち平坦型は約三分の一認めます。胃バリウム検査では早期胃がんのうち三分の一は見逃されることになります。
●このように内視鏡による早期胃がんの発見率は胃バリウムと比較にならないほど優れています。半年前の胃バリウム健診で正常だと診断された方が食べられないと訴えて内視鏡をおこなったら手遅れの進行胃がんでした。手術はしましたが9ヵ月後に亡くなりました。半年前の健診の間接レントゲンフィルムを見たら明らかに胃がんでした。誤診と思われます。
●大腸癌は最近胃がんの発生頻度を追い抜いています。大腸癌は胃がんに比べて自覚症状が全くありません。55歳男性が倦怠感を訴えました。胃内視鏡検査は毎年受けているので大腸内視鏡検査を勧めました。患者様が希望されて3ヶ月後におこなったところ直腸癌でした。幸いなことに人工肛門にならずにすみました。
●大腸内視鏡大腸のバリウム検査は胃のバリウム検査より悲惨です。被爆線量が2―3倍多いこと。空気とバリウムを交互に肛門から挿入されてお腹が蛙のようにぱんぱんに張ること。撮影台の上で何度も体位変換をされてあまつさえ逆さまにされることも珍しくありません。それで異常所見が見つかると内視鏡ですから患者はたまりません。以前注腸検査(大腸バリウム検査のこと)を受けて当クリニックで大腸内視鏡を受けた患者様は初めから内視鏡を受けたいと異口同音に言われます。
●大腸内視鏡検査は医師の熟練度によって挿入時間は千差万別です。私は現在大腸の一番奥(回盲部)まで挿入に要する時間は平均で3―4分です。早い時は1分台です。先日大学病院でS状結腸の奥へ挿入出来なかった患者様が来られました。私は回盲部まで挿入するのに2分かかりませんでした。時間の競争をしているのではないので自慢してもしょうがないことですが、早く挿入することは患者様の苦痛がなくなることに通じるのです。無痛内視鏡は薬剤(鎮静剤)を使用して患者様の痛みの感覚を抑えますが、薬剤で完全に痛みを抑えようとすると意識を完全に取る全身麻酔になります。
●完全に痛みを取ると強く内視鏡が粘膜に押し当てられて穿孔事故をしても患者が訴えないので危険です。大腸は胃と異なり1.5―mと長いため曲がりくねった状態でお腹の中にあります。大腸の長い方は屈曲部で二重三重にとぐろを巻いている場合も稀ではありません。そこに硬いスコープが挿入されるのですから挿入技術が未熟だと患者様が痛みを訴えるだけで奥へ挿入できません。特にS状結腸から下行結腸の境がヘアピンカーブになっているため未熟な医師はここを越えるのが一苦労です。大学病院で受けた患者様は30分以上挿入してS状結腸の先に行かなかったようです。だから短時間に挿入することが無痛内視鏡の基本なのです。
●新日本橋石井クリニックでは毎月2―3件早期がんを発見していずれも内視鏡治療で治療しています。ごくたまに手術する例(早期でもがんが粘膜下に浸潤している場合)もありますが腹腔鏡で傷跡も小さく短期間の入院で済んでいます。再発の危険性はほとんどありません。
●そして内視鏡はレントゲン被爆が全くないので何度受けても人体に安全です。熟練した医師がおこなう内視鏡なら穿孔などの事故はあり得ません。新日本橋石井クリニックは平成8年開業以来10000件以上内視鏡検査(胃、大腸)を施行して無事故です。
●私は今までに30000件以上内視鏡検査を施行した熟練医師です。私は医師となって32年、その間医療訴訟は全くありません。健診の内視鏡検査費用は胃バリウム検査と変わりません。内視鏡の洗浄も酵素洗浄(血液等体液の汚れを落とす)と殺菌洗浄(細菌、ウイルスを0にする)を徹底的に行っていますので新日本橋石井クリニックは院内感染とは無縁です。

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